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S-Project レポート

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2012年 03月 12日

構造設計家・佐々木睦朗さんとの共同作業(その2)

構造に関して西沢事務所は設計当初、鉄板の耐震壁の可能性も考えていた。しかし佐々木さん(佐々木睦朗構造計画事務所)との最初の打ち合わせで、ランダムに配置されたRC壁とRCのフラットスラブという構成が決まり、可能なかぎり薄くしたスラブを最小限の構造体で支えるために鉄骨柱をあわせて用いることになった。

西沢事務所と佐々木事務所によるスタディでは、まず最初に模型と図面で全体のイメージを共有し、RC壁や鉄骨柱の位置や大きさを協議していった。例えばRCの耐震壁については佐々木事務所からX方向、Y方向にそれぞれ、どのくらいの大きさの壁が何枚必要、といった指示があり、その条件を西沢事務所がプランにおとし込む。そしてそれを両者で細かく調整をしていく、というのが基本的な流れだ。

その調整だが、意匠サイドがクライアントや設備設計との打ち合わせなどを踏まえてプランを変更すると、その都度、構造サイドによる調整が必要となる。またプランだけではどうしても解決できないところは、構造サイドに他の方法を考えてもらう。このように両者がキャッチボールのように話し合いを重ねながら、着地点を探していくわけだ。そして形態がある程度まで決まると、今度は3次元CADによるモデルをもとにした詳細な構造解析が行われ、その結果が再び意匠設計にフィードバックされる。

全体的に寸法がとてもシビアな建物のため、こうした調整には煩雑な検討作業が避けて通れない。柱の位置ひとつをとってみても、構造上必要とされる位置が、デザイン上でも問題がないとは限らないのだ。なかでも大変だったのは1階のギャラリー。最大約8メートルのスパンの空間だが、ここを柱を落とさないための梁と構造壁の検討には多くの時間が費やされた。

最終的には詳細な構造解析を何度も行ってもらいつつ、構造と意匠、設備を調整して、全体を統合していく。軽やかに見える建物のイメージを支えているのは、地道で実践的な作業の繰り返しなのだ。(鈴木布美子+松井元靖/西沢立衛建築設計事務所)

構造設計家・佐々木睦朗さんとの共同作業(その2)_c0231905_9421324.jpg
ギャラリーに柱をおとさないための梁と周辺の構造壁を検討中の模型写真。この段階では、2階に梁を出した場合を検討している。©Office of Ryue Nishizawa

by S_Project | 2012-03-12 10:00 | プロジェクトについて | Comments(0)


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